ルールを増やさず対応する発想が難しい理由

問題が起きたとき、多くの組織では「新しいルールを作る」ことで対応しようとします。再発防止や公平性の確保という観点から、ルールを増やす判断は分かりやすく、説明もしやすいです。そのため、ルールを増やさずに対応する発想は採られにくくなります。

ルールを増やさず対応することが難しい理由の一つは、責任の所在が不明確になりやすい点にあります。ルールがあれば、「ルールに従った」という説明が可能ですが、判断に委ねる場合、その責任は個人に帰属します。この不安が、ルール追加を選ばせます。

また、ルールは目に見える成果として扱われやすい特徴があります。新しいルールを作ったこと自体が対策として評価されやすく、実際の効果が問われにくくなります。一方で、ルールを増やさない対応は、何をしたのかが見えにくくなります。

さらに、ルールを増やさないためには、判断の前提や価値観を共有する必要があります。これは時間と対話を要するため、短期的には負担が大きく感じられます。その結果、手早く対応できるルール追加が選ばれます。

ルールを増やさず対応するには、一定の信頼と判断力が前提になります。その前提が揃っていない場合、ルールに頼る方が安全に見えます。これは合理的な選択でもあります。

ルールを増やさない発想が難しいのは、怠慢ではなく、構造と心理の問題です。ルールを増やる前に、その問題が本当にルールでしか解決できないのかを考える余地があるかどうかが、組織の柔軟性を左右します。