制度が現場の言葉を失うとき

制度は、現場で起きていることを整理し、共通の枠組みとして扱うために作られます。本来は、現場の経験や課題を言語化した結果として制度が存在します。しかし、時間の経過とともに、制度が現場の言葉を失っていくことがあります。

制度が現場の言葉を失うのは、運用と設計の距離が広がったときです。制度を管理する側と、実際に使う側の間に距離が生まれると、現場で使われている言葉や感覚が制度に反映されにくくなります。その結果、制度の表現は抽象的になっていきます。

また、制度が更新されない状態が続くと、現場では独自の言い回しや解釈が生まれます。制度の文言では説明しきれない部分を補うための言葉です。しかし、その言葉は公式な場では使われず、暗黙知として蓄積されます。

さらに、制度を守ることが評価される環境では、現場の言葉は扱いにくくなります。制度に書かれていない表現は主観的だと見なされ、排除されやすくなります。その結果、現場の実感は制度の外に追いやられます。

制度が現場の言葉を失うと、問題の把握が遅れます。制度上は問題がないように見えても、現場では違和感が蓄積されます。その違和感は、制度の言葉では表現されないため、共有されにくくなります。

制度を機能させ続けるためには、正確な表現だけでなく、現場の言葉が入り込む余地が必要です。制度が抽象的になりすぎていると感じたときは、現場でどのような言葉が使われているのかに目を向ける必要があります。