責任を分散させることは、特定の個人に負荷が集中するのを防ぐための手段として用いられます。複数人で責任を共有することで、公平性が保たれ、リスクも分散されると考えられています。しかし、責任の分散が進むほど、物事が停滞しやすくなる場面もあります。
責任が分散されると、「最終的に誰が決めるのか」が見えにくくなります。それぞれが自分の役割を果たしていても、全体としての判断が宙に浮いた状態になります。その結果、重要な決断ほど後回しにされやすくなります。
また、責任が共有されている状態では、判断による影響が個人に返りにくくなります。良い結果も悪い結果も分散されるため、強い動機づけが生まれにくくなります。その結果、無難な選択が積み重なり、変化が起きにくくなります。
さらに、責任分散は調整の増加を招きます。誰か一人が判断する代わりに、合意形成が必要になるため、確認や説明の工程が増えます。これが繰り返されると、スピードは大きく低下します。
この停滞は、誰かが怠けているから起きるものではありません。責任を分散する設計そのものが、判断を遅らせる方向に働いています。公平性を重視した結果、動きにくくなる構造が生まれます。
責任を分散するか集中させるかは、善悪の問題ではありません。重要なのは、どの判断にどの程度の責任を持たせるのかが整理されていることです。責任の分散が停滞を生んでいると感じたときは、その設計を見直す必要があります。