役割定義は、責任の所在を明確にし、業務を円滑に進めるために設けられます。誰が何を担当するのかが明確であれば、判断や作業はスムーズになると考えられています。そのため、問題が起きるたびに役割を細かく定義していく対応は合理的に見えます。
しかし、役割定義が増え続けると、かえって責任の範囲が分かりにくくなることがあります。細分化された役割同士の境界が曖昧になり、「これは誰の役割なのか」という問いが頻繁に生じます。役割が増えたはずなのに、判断の所在は見えにくくなります。
また、役割が細かく分かれることで、役割間の調整が必要になります。それぞれの役割が自分の範囲を守ろうとすると、全体としての判断は止まりやすくなります。役割定義が判断を助けるのではなく、判断を分断する方向に働きます。
さらに、役割定義が増えると、「役割に書かれていないことはやらない」という行動が合理的になります。責任を明確にするための定義が、行動範囲を狭める理由になります。その結果、誰も間違っていないのに、物事が進まない状態が生まれます。
この現象は、個人の消極性によるものではありません。役割定義を増やすことで、判断や対応の余地がどのように変わるのかが十分に考慮されていない構造的な問題です。
役割定義を見直す際には、定義の数を増やすことよりも、役割同士の関係や判断の流れを整理することが重要です。役割は多ければ良いものではなく、全体として機能するかどうかが問われます。